経営者保証

金融庁の経営者保証に関するガイドラインの実態調査について

民間銀行の監督官庁である金融庁が、経営者保証に関するガイドラインの実態調査を公表しました。

今回の実態調査では、ガイドラインを活用する上で考えられる「ガイドラインの要件判断の状況」、「事業承継時におけるガイドラインの活用状況(二重徴求)」、「信用保証と経営者保証の関係」などについて調べています。

調査時点での、新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合は約16%であり、代表者交代時における二重徴求(旧経営者と新経営者の両方から個人保証を徴求している状態)の割合は4割弱となっています。

個別の金融機関の取組みを見ると、ガイドラインの活用や二重徴求解消に関して、金融機関により組織的な取組みに違いが見られます。

こうした状況から、取組みが進んでいる金融機関と進んでいない金融機関の違いの実態を把握することが重要であり、地域銀行12行に対して、無保証融資の割合や二重徴求の割合が比較的に高い又は低い金融機関の状況に焦点を当てて分析しています。

 

本記事では、上記金融庁の調査結果の主な点について紹介します。

 

本記事の内容

・経営者保証に関するガイドラインの概要

・ガイドラインの要件判断の状況について

・事業承継時におけるガイドラインの活用状況(二重徴求)について

・信用保証と経営者保証の関係について

 

本題に入る前に、「経営者保証に関するガイドラインって何?」という方のために、経営者保証のガイドラインの概要を解説します。

ご存じの方は、本題の「ガイドラインの要件判断の状況について」まで読み飛ばしていただいてかまいません。

 

経営者保証に関するガイドラインの概要

経営者保証に関するガイドラインは、平成26年2月1日から適用となった、中小企業団体及び金融機関団体共通の規則です。

経営者保証における合理的な保証契約の在り方等を示すものであり、法的拘束力はないものの、主たる債務者(借入をした企業等)、保証人(経営者や第三者)、対象債権者(金融機関等)によって自発的に尊重され順守されることが期待されています。

なお、経営者保証とは何かは、下記の記事で詳しく解説しています。

ご参照
【5分で分かる】経営者保証とは何かを簡単に解説します

社長の息子(後継者)「いよいよ社長を引き継ぐ時がきたな。入社した時から覚悟はしていたけど、不安も大きいな。うちの会社は銀行からの借り入れがあったよな、たしか親父が保証人になっているはずだ。いわゆる経営 ...

続きを見る

 

経営者保証に関するガイドラインの要点は以下の3つになります。

 

(1)法人と経営者との関係が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証をもとめないこと

(2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて約100~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることができるなどを検討する

(3)保証債務の履行時返済しきれない債務残額は原則として免除するこ

 

次は、本題となる調査結果の解説に進みます。

 

ガイドラインの要件判断の状況について

経営者保証に関するガイドラインにおいて、以下の3要件を満たす場合、経営者保証を求めない可能性を検討するよう求められています(ただし、必ずしもすべての要件の充足を求めているわけではない旨規定)。

 

①法人と経営者との関係の明確な区分・分離

②財務基盤の強化

③適時適切な情報開示

 

無保証融資の割合が高い金融機関と低い金融機関における、ガイドラインの要件の判断状況を見ると、
①法人と経営者との関係の明確な区分・分離、②財務基盤の強化の判断について、大きな差が見られました。

 こうした相違の背景として、以下のような取組みの違いが見られました。

・無保証融資の割合が低い金融機関は、ガイドラインの要件を形式的・厳格に判断して運用

・無保証融資の割合が高い金融機関は

①経営トップが、むやみに保証を徴求しないよう指導を徹底する方針を定めている
②現場担当者が保証徴求の要否を簡易に判断できるよう、本部で具体的・簡素な運用基準を設定している

 

 

事業承継時におけるガイドラインの活用状況(二重徴求)について

二重徴求について見ると、新経営者に対する保証徴求割合は、各行によりバラつきはあるものの概ね高い傾向を示しており、旧経営者に対する保証徴求割合(特に、旧経営者の経営関与が弱い先における保証徴求割合)が低いほど、二重徴求の割合が低い傾向が見られました。

なお、経営関与が弱い先とは、①旧経営者の代表権がなく、かつ、②株式保有割合が1/2以下の先をいいます。

 

二重徴求の割合が高い金融機関と低い金融機関の組織的な取組みについて、以下のように違いが見られました。

 

・二重徴求の割合が高い金融機関は、行内規定が不十分であるなど、二重徴求解消に向けた具体的な取組みが行われていない。

・二重徴求の割合が低い金融機関は経営トップ主導のもと、

①二重徴求解消に向けて、二重徴求の原則禁止や事業承継時の具体的な徴求基準の明確化
②新・旧経営者双方に対する説明や保証解除に向けたアドバイスを実施しているほか、
③さらに、一部の金融機関は二重徴求後も定期的にフォローしている。

 

 

信用保証と経営者保証の関係について

信用保証付き融資が経営者保証に与える影響を見ると、以下の状況が見られました。

信用保証付き融資について、運用上、信用保証協会から経営者保証の徴求を求められており、当該融資のほとんどに経営者保証が付されていました。また、一部の金融機関を除き多くの金融機関が、信用保証付き融資の利用先に対するプロパーの協調融資(信用保証の付かない協調融資)についても、経営者保証を徴求しています。

事業承継時における二重徴求の件数は、プロパー融資が約2割である一方、信用保証付き融資が約6割であり、信用保証制度の影響がみられます。

実態調査期間が下記見直し時期以前となっているため、上記結果ととなっています。現状は信用保証付き融資の事業承継時の対応は以下のように変化しています。

 

(注)平成30年4月からの信用保証制度の見直しにより、以下の対応となりました。

① プロパーの協調融資に関して担保や経営者保証を徴求していない場合、信用保証付き融資につ
いて、経営者保証の徴求を要しない運用となる。
② 信用保証付き融資に関して、事業承継時における二重徴求は基本的に行わない運用となる。
(以前は二重徴求となるケースも多かった。)

 

以上、金融庁の経営者保証に関するガイドラインの実態調査結果の紹介でした。

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