診断士試験の受験生「独学で勉強するために、まずは参考書をそろえなきゃ。自分に合わないの選んで失敗したくないから、万人受けするものがいいな。あと、まずは1次試験の分を手に入れたら勉強スタートできるけど、2次試験の参考書はいつから用意すればいいのかな?」
このような疑問に答えます。
本記事の内容
・1次試験対策用テキスト【王道で決まり】
・2次試験対策用テキスト【ふぞろいを早くそろえよう】
・財務補強用テキスト【財務を制するものは試験を制す】
この記事を書く私は、中小企業診断士試験を独学・ストレートで合格。
勉強期間は約1年であり、時間は1400時間ほど。1次試験は455点、2次試験はAAAA(270点)で合格しました。
独学の場合、テキスト選びは特に重要です。私が実際に勉強に使用し、合格に役立ったものを紹介します。
1次試験対策用テキスト【王道で決まり】
「王道」とは「TAC」のことです。
言わずと知れた、中小企業診断士の最大手予備校「TAC」が出版する以下の参考書がオススメです。
①スピードテキスト
おそらく一番使われている参考書であり、最大手の予備校が出版する安心感と安定感が強みです。
解説は丁寧で分かりやすく、知識のインプットに最適。毎年9月~12月頃にかけて最新の改訂版が出版されています。
次に紹介するスピード問題集と合わせて使用すれば、インプットした知識の定着を図ることができ、さらに効果的に学習できます。
科目によっては、このスピードテキストの内容では不十分といった意見もあります。
たしかに、試験範囲のすべては網羅されてはいないでしょう。
ただ、合格点である60点から、70点くらいまでを目標に学習するにはちょうど良い、要点を絞り込んだ内容です。
試験科目は7科目もあり、科目ごとの範囲も広いため、高得点を目指すには勉強時間がかかりすぎます。
極端に苦手な科目が無ければ、インプット学習はスピードテキストだけで十分です。
②スピード問題集
スピードテキストの内容に沿った問題集です。
スピードテキストでインプット学習をして、このスピード問題集でアウトプットし、知識の定着を図ります。
スピード問題集に沿った内容なので、同時並行で学習を進めることが可能。
また、過去問の学習を始める前のトレーニングにも最適でした。
いきなり過去問を解き始めるのではなく、まずはこの問題集で、知識のアウトプットに慣れるのが良いかと。
③過去問題集
過去問題集のメリットは以下の通りです。
①解説が載っており、選択肢の正否がわかる
②問題ごとの正答率(難易度)がわかる
③法律改正等で学習にふさわしくない問題がわかる
①解説が載っており、選択肢の正否がわかる
中小企業診断協会のホームページに、過去の試験問題と解答は掲載されていますが解説はありません。
解説がないと、選択肢ごとの正否の理由が分からず、理解が深まりません。
過去問に取り組むうえで、最低1回は解説を読むべきです。
②問題ごとの正答率(難易度)がわかる
TACの過去問題集は、独自のリサーチによる正答率によって、問題をランク分けしています。正答率80%以上はA、正答率20%未満はEといったように、20%ごとに5つのランクに分けています。
このランクによって、取り組むべき問題の優先度が分かることが重要。
満点を目指す試験ではないので、難しい問題は解けなくても気にせず、皆が正解している問題に優先的に取り組むべきです。
③法律改正等で学習にふさわしくない問題がわかる
過去問の中には、法改正等で正解が変わったりした、学習にふさわしくない問題があります。
そういう問題は飛ばして学習しましょう。
1次試験のテキストは以上です。次は2次試験のテキストを紹介します。
2次試験対策用テキスト【ふぞろいを早くそろえよう】
2次試験の対策をするうえで、必須といえる参考書が「ふぞろいな合格答案」シリーズです。断言します。
以下に、ふぞろいな合格答案の内容と手に入れたいシリーズ、早くそろえるべき理由を解説します。
①ふぞろいな合格答案とは?
②どのシリーズを手に入れればいいの?
③早くそろえるべき理由
①ふぞろいな合格答案とは?
ふぞろいな合格答案とは、2次試験の受験者から集めた再現答案(※)を分析し、合格者の答案に共通するキーワードや切り口が掲載されている参考書です。
※再現答案とは、2次試験の受験後に、自身の解答内容を記憶を頼りに再現したもの。
なぜこの参考書が必須なのか?それは以下の理由からです。
中小企業診断士試験の最難関である2次試験は、解答や採点基準が公開されていません。
つまり、過去問を解いても、自分の解答が正しいのか、点数にすると何点くらいなのかが分からない。
解答の点数が分からなければ、自分の実力が合格基準にあるのか、そうでないか分からないということです。
このいわば「過去問取り組み後の答え合わせ」に役立つのが、「ふぞろいな合格答案」です。
キーワードごとの点数が掲載されているため、その点数を自分の解答に当てはめることで採点が可能。
過去問に解答した後、ふぞろいを参考に採点をして60点以上あれば、合格基準の解答が書けていると判断できます。
もちろんこのキーワードごとの点数というのも、合格者の再現答案から推察したものなので、本当に正しいかどうかは、試験問題を作った人にしか分かりません。
しかしながら、模範解答や採点基準が公開されない限りは、合格者の再現答案を集め分析したこの参考書こそが、2次試験の対策に有効であると言えます。
②どのシリーズを手に入れればいいの?
ふぞろいな合格答案シリーズは本記事の執筆時点で、2008~2019年度版まで12冊が発売されています。
結論を言うと、この12冊すべてを手に入れることがベスト。
ただ、比較的新しい刊はともかく、古いものについては数が少なく値段も高騰しており、あまり現実的ではありません。
そのため、ふぞろいな合格答案の「答案分析編」を抜粋し、複数年度分をまとめた「ふぞろいな答案分析」というシリーズも発売されており、それで代用しましょう。
ふぞろいな答案分析を1から4まで揃えれば、ふぞろいな合格答案2008~2010年度版までの10冊分の「答案分析編」を参照できるため便利です。
ふぞろいな答案分析1は中古でも値段が高いですが、2~4までは比較的安く入手しやすいです。
ふぞろいな合格答案をそろえるよりも、持ち運ぶ冊数が減ることもメリットです。
ふぞろいな答案分析1~4とふぞろいな合格答案11及び12をそろえましょう。これで過去問12年分です。
※補足
私の受験時は無かったものですが、「ふぞろいな合格答案10年データブック」という総集編も発売されています。
答案分析結果だけを、10年分集め1冊にまとめたものです。
キーワードごとの点数や再現答案も掲載されており、1冊にまとめてあるので非常に画期的。
ただ、1つ注意が必要なことがあります。
ふぞろいな答案分析1~4には掲載されていた、設問ごとの解説が省略されていること。
この解説部分は、設問にどのような切り口で解答すべきかや、設問への対応の仕方等が対話形式で紹介されています。
これは、その年度の過去問に初めて取り組む際に、非常に参考になる部分。
おそらく、10年分をまとめるうえでページ数の都合もあって省略したのかなと思います。
このデータブックで10年分の過去問対策をする場合は、その点にご注意。
③早くそろえるべき理由
早くそろえるべき理由は、2次試験日が近づくにつれて、品薄になり価格も高騰するからです。
特に1次試験終了直後からは、2次試験対策のために1次試験合格者が買い始めるため、より品薄に…。
これから発売される最新版については、発売前に予約購入すれば買い逃すことはないでしょう。
しかし、過去に出版されたものは新品の入手が難しく、中古での購入になると、需要と供給の関係により出版数が少ない古いものほど価格が高騰します。
私も上記の失敗をしていまして、1次試験合格後に購入しようとしたら、「ふぞろいな答案分析1」は高騰しており、1冊で1万円近い出費となりました。
また、値段が高いうえに書き込みがある等、状態もあまり良くありません。背に腹は代えられず購入しましたが、もっと早く探していればと後悔です。
ネットで購入したため、届くまで勉強もできず、時間的にもロスです。
私と同じ失敗をしないように、ふぞろいシリーズについては、今からでもそろえ始めることをオススメします。
2次試験の合格発表後には、合格者がアマゾンやメルカリ等で売り始めるので、状態が良いものを安く手に入れようとするならチャンスかと。
財務補強用テキスト【財務を制するものは試験を制す】
中小企業診断士の試験において、1次試験・2次試験ともに財務・会計の知識が問われます。
財務・会計は、計算問題が多いという特性上、計算が得意な人は反復学習により得点が伸びやすい反面、苦手意識を持つ人も多い分野です。
どちらのタイプの人へも、以下の理由により、財務補強用のテキストによる学習をオススメします。
①苦手な人は「足切り」を回避する
②得意な人は「得点源」にする
①苦手な人は「足切り」を回避する
中小企業診断士の試験には、1次試験・2次試験ともに「足切り」があります。
試験案内によると、「合格基準は、総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満のないこと」
つまり、40点未満の科目があれば、他の科目がどんなに高得点でも不合格ということです。
財務・会計の科目に限ったことではないですが、年度によって試験問題が難化することもあります。
苦手な状態で、難化した年に当たると足切りになりやすいため、注意が必要です。
苦手な人は最低でも足切りを回避できる実力をつけるために、財務・会計専用のテキストで補強しましょう。
②得意な人は「得点源」にする
「僕は財務が得意だから、別途の学習は必要ないな」
という人はちょっと待ってください。
得意であればこそ、さらなる強化のために専用のテキストで学習することが有効なのです。
なぜなら、財務・会計は学習量に比例して得点が伸びやすい科目だからです。
高得点を取れば、他の科目で低い点数だったとしても、カバーすることが可能。これは、1次試験でも2次試験でも言えることです。
模範解答が公開されていない2次試験でも、財務・会計の事例Ⅳは計算問題や、数字で解答する問題が出されるため、基本的に答えは1つしかありません。よって、財務・会計が得意な人は事例Ⅳに関してはコンスタントに高得点が期待でき、2次試験を合格する上で非常に有利と言えます。
以上の理由から、財務・会計に関しては、得意な人もそうでない人も専用のテキストで学習することをオススメします。これが私が補強に使ったものです。
1次試験・2次試験ともにこの1冊で学習できます。
論点別の問題ごとに難易度が表示されていて、苦手な人は易しい問題から慣れていくことができます。また、得意な人は難しい問題に集中して取り組むことにより高得点を取る力がつきます。
長々と解説してきましたが、以下がオススメな参考書のまとめです。
①スピードテキスト【TAC】
②スピード問題集【TAC】
③過去問題集【TAC】
④ふぞろいな合格答案
⑤ふぞろいな答案分析
⑥集中特訓 財務・会計 計算問題集
私は上記以外の参考書も購入しましたが、ほぼ使いませんでした。紹介した6種類の参考書だけで合格できたことになります。
この記事が、テキスト選びの参考になれば嬉しいです。